飲み会の作法はなぜ必要か

はじめに

    「飲み会の作法」とは何か。これは礼儀作法にとどまらない実践する方法があることを意味する。この方法がなぜ必要か。飲み会をただ楽しいものから、何かを得る場へと一段あげることが長い人生において有意義だからだ。

 このような飲み会は勤め先の仲間同士で集まって望まれるかたちではないかもしれない。しかし、何かが得られる場としての飲み会を部署内の人員転出・転入のような節目で行っているところは現在も実際にある。例えば公務員の歓送迎会やレクリエーション後の会はこれにあたる。

 作法というと細かくて多くありそうだ。気にしはじめたら切りがない。そんな中で、とても実用的で得られるものが多く、やろうと思えば誰にでもできること3つから、なぜ飲み会の作法を知っていて実践できることに意味があるのかについて答えたい。

1.座布団を踏んで立たない

    社会人の飲み会ではテーブル席ではなく座敷を利用することが多い。この座敷での正しい振る舞いを知らずに損をすることがある。それが「座布団を踏んで立つ」ことだ。なぜそうしないのかという理由は重要ではない。ただ、「座布団を踏んで立つ」ことをする姿を見て評価している大人がいることを知ればいい。これはもちろんよくない評価だ。

 作法であるから、できていればそれでよいのだ。会の終わりに手を叩くとき。転入したところで自己紹介するとき。転出する元の部署で挨拶するとき。このときに座敷で立つ場合は座布団を踏んで立たない。座布団は避けて床に立てばいい。


2.挨拶する人の話は聞く

    飲み会には2つの酒の肴がある。ひとつは目の前に運ばれる料理。もうひとつは会で挨拶する人の話だ。どちらの酒の肴が重要かは説明の必要がないだろう。料理がうまいことは会が盛り上がることにおいて重要だが、それによって会での経験が有意義になることはない。挨拶する人の話は次の節でいかに役立つか述べるが、それ以前に飲み会で人の話を聞くことは、その後の飲み会人生で役に立つ。特に人が立って会の参加者全員に向かってする話に注目しよう。

 立って話す人を見てどのような印象を受けるか。話し手は会で挨拶するために準備をしてきているか。準備をしていそうであれば、その準備は何のためか。その準備によって話し手がした話から何かが伝わってこなかったか。このように一度の飲み会から得られるものは多い。

3.立って挨拶した人の話を聞きにいく

    この話が聞きに行ける参加者はどれだけいるだろうか。2017年に参加した飲み会では見かけていない。目の前に座った初対面の異性と気後れせずに仕事の話ができた参加者を見て偉いと思ったぐらいだ。人の話を聞きに行くとは、会で割り当てられた自分の座席の周りの方々の話を聞くことではない。立って挨拶した人。すなわち、その会の主賓に近い人のところへ出かけていって一献の酌を行い、さきほどのスピーチ内容について、より詳しい話を聞くのだ。

 話を聞きにいくときは瓶ビールであると都合がよい。左手に自分のビールグラスを持ち、右手にビール瓶を持つ。そして、立って挨拶した人のそばへ行って膝を折る。これだけで相手には、そばへ寄ったことの真意が伝わる。もちろん相手がビールを飲まない人であったら実際に酌をすることはないだろう。だが、わきまえた大人であれば持って行ったビールグラスに酌をしてくださる。このときは有り難く頂戴しよう。そして、立って話された内容からつかめた話題の少し踏み込んだところを聞いてみよう。

 話し手は全員の前で話す内容を吟味している。少しでも参加者に役立つ、実のある話をしようと努めている。そのような話には全員の前では話せないより深いところの内容があるはずだ。これを聞くことは酒を飲んで盛り上がって楽しむことよりも会を有意義な経験にしてくれる。

おわりに

    瓶ビールだとお酌をしなければならず面倒だ。そう思う読者も少なからずいるだろう。この気持ちはわかる。筆者も若い頃にいくら気を張っていても適したタイミングで瓶ビールでのお酌ができずに苦々しい思いをした。最初はできなくても構わない。やろうとする心意気をかってくれる大人はまだまだ多くいる。

 気を遣えという強制ではない。うまくできなくてもいい。飲み会のしつらえが座敷であり、はじめの飲み物が瓶ビールであるということは、それ自体が会を設えた人の気遣いなのだ。瓶ビールがあればお酌をすることで周囲の初対面の方々とやり取りをするきっかけになるだろうと、そうしてくれているのだ。

 このような飲み会が実際にあるのか。あるところにはあるとしか言えない。これに出会ったときに、その機会を活かせる準備をしておこう。何度も同じことを書いてしまうが、はじめから上手くできるものではない。このなかに書いた「気遣い」というものが馴染まない読者もいるだろう。はじめはそれでいい。何年も社会人を続けていくなかで日々の繰り返しに疑問を抱く時期もある。そんなときに、立って話をした人のなかで、いまの自分に役立つことを口にした人がいたら、この時にチャンスを逃さぬよう心得ておいてほしい。

コメント

このブログの人気の投稿

一杯目の飲み物は乾杯するためにある